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zoom RSS 酒呑童子伝説のスピンオフ ― なぜ誰も『金太郎』の物語を知らないのかにょ?

<<   作成日時 : 2018/08/19 20:34   >>

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 ネットに次のような記事があったにょ。
「人魚姫」は最後どうなるか知っていますか? 意外と知らない昔話や童話のオチ - ねとらぼ

 この手の昔話や童話の知識の有無をネタにする記事が定期的に出てくるけど、定番的に誰も知らないのが『金太郎』だにょ。
 一口に昔話や童話と言っても、その種類にはいろいろあるにょ。

 まずは『イソップ寓話』みたいな古典説話。記事で触れられてる中では『ウサギとカメ』がこれに当たるにょ。個々の物語は昔からの言い伝えであったり、誰かが子供に言い聞かせるために考えられたものだったり、由来は様々だろうけど、古い時期に子供の道徳的教育の材料としてまとめられたものがそのまま伝わってるものだにょ。
 これはその話の材料が、寓話の目的である道徳的意味合いと深く関わっているから、けっして内容が変えられたるすることはないにょ。『イソップ寓話』は古代ギリシャ時代のアイソポスという人がまとめたとされるほぼそのままの形で今に残ってるにょ。

 次に『アンデルセン童話』のような近代以降の創作童話だにょ。記事で触れられてる中では『人魚姫』がデンマークの童話作家アンデルセンによって創作されたものだにょ。これは童話云々以前に作家の作品として(作品の同一性など保証する)著作者人格権が尊重されるべきものなので、すでに著作権保護期間が切れた作家の作品といえども、用意に改変されたりしないにょ。

 そんなわけで、『イソップ寓話』や『アンデルセン童話』のような作品は物語の形が固定化されて存在しているので、その物語を知ってる限りは、その結末は固定されたイメージでしっかりと記憶されるにょ。

 さて、昔話や童話には上記とは違うタイプのものも多いにょ。それは、昔から口碑伝承として伝えられて来たものが、何らかのタイミングで文章にまとめ上げられ、定型化した物語として流布されるようになったものだにょ。代表的なものはドイツの民話をまとめた『グリム童話集』とか、日本の伝承を集めた中世の『御伽草子』とかに集められた物語だにょ。
 記事で触れられてる中では『舌切り雀』がこれに当たるかにょ。『舌切り雀』の物語自体は『御伽草子』より古く『宇治拾遺物語』に収められた説話「腰折雀」に由来するようで、今のようにお土産の葛籠を貰うという形になったのは江戸時代以降のようだけどにょ。『宇治拾遺物語』は説話文学と言って、仏教関係で教えの摂理をわかりやすくするために集められた物語だから、本来の目的で言えば『イソップ寓話』に近いものがあるのかもしれないけど、そういった目的は失われて説話の中身だけが残ったものだろうにょ。
 このタイプの昔話とか童話は、元が口碑伝承の収集であるから、作者が判明してるようなものはほとんどなく、著作権とかは関係ないし、そもそも収集された文献の成立年代が古ければ古いほど、再び口碑伝承化していってしまうものも多いため、時代の変遷や語り部によって様々にバリエーションが生まれてくるにょ。
 それでも、『ペロー童話集』みたいな後世に非常に影響を与えるような決定的な文献としてまとめられたものは、そこに記された物語が定型的な形として残されるにょ。(例えば『シンデレラ』の物語は後にグリム兄弟がドイツで同様の伝承を採集しているけど、現在の『シンデレラ』のイメージは概ね『ペロー童話集』のものだにょ)
 日本の昔話の場合、『御伽草子』自体も時代時代によって書き換えられてるため、明治以降に国定教科書や児童向け書籍としてまとめられたものの影響が大きいにょ。

 ところで、『金太郎』の物語はこれまでに述べた3つの、どのタイプに当たるだろうかにょ?

 結論を言えば、どれにも当てはまらないにょ。そもそも昔話や童話として定着する以前の存在でしかないにょ。
 この『金太郎』の物語は何かと言うと大江山酒呑童子伝説のスピンオフ作品だにょ。

 たいていの人は『金太郎』というと「まさかりを担いで」とか「クマと相撲」というイメージがあると思うけど、これは明治に作られた童謡の『金太郎』のイメージだろうにょ。で、この童謡の『金太郎』はその足柄山でクマと相撲してる金太郎を歌ってはいるけど、それ以外の物語は歌っていないにょ。つまり童謡しかしらない人にとって、『金太郎』とはその部分の存在でしかないということだにょ。
 そりゃ、金太郎が坂田金時という人物の幼名だという知識があって、そこから源頼光や酒天童子に行き着く人も多いだろうけど、そこから金太郎の物語がどんなものかを想像できる人はいないと思うにょ。

 この『ねとらぼ』の元記事を書いた人はネットで検索したりして明治なり戦前に子供向けに書かれた『金太郎』の物語を他の昔話や童話の物語と同様だと思ってるんだろうけど、普通に読めば違いがあるとわかると思うにょ。
 Wikipediaの『金太郎』の項目にリンクされてる『青空文庫』の『金太郎』は、楠山正雄という人が大正年間に出した『日本童話宝玉集』(の一部を再収録した講談社学術文庫の『日本の神話と十大昔話』)に収められてるものだにょ。
 ここに収められてる『金太郎』の物語は、クマと相撲して力を鍛えた金太郎が源頼光の家臣の碓井貞光の目に止まり、都に行って頼光の家臣の四天王の一人になったというお話にょ。他の昔話と比べると大きく違うのは、ラストに実在の人物の名がゾロゾロと挙げられて、金太郎との関係性の説明に終わってるところにょ。

 昔話とか童話というのは基本的に「いつ」という時代性や「誰が」という具体的個人性が曖昧に抽象化されているものだにょ。そうでない、時代や人物が具体的だけど物語そのものに信憑性がない言い伝えは「伝説」と呼ばれるにょ。つまり、『金太郎』の物語は昔話や童話ではなく「伝説」の範疇に含められるものということにょ。
 まあ「伝説」に含められる物語であっても、そういう具体的情報を失って抽象化され、昔話になっていくものもあるにょ。『浦島太郎』の物語も『日本書紀』が編纂された頃にはまだ具体的な年月が語られる「伝説」だったみたいだにょ。

 そんなわけで、『金太郎』の物語は大江山の酒天童子伝説で頼光の家臣として活躍する坂田金時の由来を語ったスピンオフの「伝説」ということだにょ。源頼光というのは清和天皇の孫で清和源氏の祖とされる経基王の孫に当たる実在の人物であり、頼光四天王の他の3人も実在したらしいけど、坂田金時は伝説上だけの架空の人物らしいにょ。架空の人物だからこそ、その由来がスピンオフで語られるようになったのだろうにょ。

 頼光四天王としての坂田金時の存在が語られるようになったのは早く、頼光の時代から100年後ぐらいからみたいだけど、スピンオフとしての金太郎の物語は江戸時代になってからみたいだにょ。
 戦乱の時代が終わって平和になった江戸時代、武家の家庭で子供に武芸の鍛錬に興味をもたせるために語られ始めたのが最初で、歌舞伎や浄瑠璃で頼光四天王の物語が広く知られるようになってから庶民に広まっていったのかにょ。ま、この金太郎の物語は頼光四天王の知識がないと意味不明で終わってしまうからにょ。
 富国強兵を目指す明治〜戦前の社会でも、その金太郎のイメージは重宝されただろうにょ。童謡の『金太郎』はその時代の産物だけど、この歌だけでは金太郎の物語はわからないにょ。背景に「伝説」を元にした物語(楠山正雄の『金太郎』のようなもの)の知識が広まっていたことが前提のはずにょ。

 auのCMの三太郎のように『金太郎』が『桃太郎』『浦島太郎』と並べられる存在として扱われるのは、このような戦前の『金太郎』の記憶に基づくものだろうにょ。
 しかし、現在では『金太郎』の物語は知られていないにょ。キャラクターじゃなく昔話としての知名度から三太郎を選ぼうとしたら、『金太郎』じゃなくて『三年寝太郎』が入ると思うのは、単に現代人が怠惰でグウタラだからではないだろうにょ。

 なぜ『金太郎』の物語が知られていないかというと、それは戦後、家庭でも学校(幼稚園)でも『金太郎』の物語が語られなくなったからだにょ。戦前、『金太郎』に期待されていた富国強兵の象徴としてのキャラクターは戦後の平和教育にはそぐわなくなったにょ。
 それだけなら『桃太郎』も同じ運命を辿りそうだけど、決定的な違いは『桃太郎』がすでに昔話として完成した独立した物語であるのに比べ、『金太郎』は酒呑童子伝説のスピンオフとしての「伝説」の域を脱しきれてなく、これを語るためには酒呑童子伝説の本体をも語らなければいけないという面倒臭さがあるにょ。また「伝説」であるが故の実在人物の登場によるリアル性が敬遠される要因だったかもしれないにょ。

 しかし、なぜか戦後も童謡の『金太郎』だけは残ってしまって、戦後生まれの日本人が『金太郎』として触れる物語は、この童謡の歌詞だけになってしまったにょ。確かにクマと相撲するだけで終止する物語なら「伝説」としてのリアリティもないし、富国強兵にも結びつかないだろうから、この童謡を意図的に排除する意味はなかったのだろうにょ。

 ……とか書いてるとアホウヨ明治原理主義者たちが「正しい日本のために『金太郎』の物語をちゃんと教えろ」とか言い出しそうな気がするけど、そんなものは自然に任せればいいだけの話にょ。日本人に本当に必要な物語なら、「伝説」的なリアリティを削ぎ落とされ、単独の物語として洗練された「昔話」として生まれ変わり、『桃太郎』のような超メジャーな存在ではなくてもそれなりに生き残っていくはずだにょ。


金太郎
楠山 正雄
B009LSTR06

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楠山正雄 金太郎

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